読んで、おっ!ほぅ?へぇ~

書籍・雑誌やネット等を読んで、「おっ!」とか「ほぅ?」とか「へぇ~」とか思った内容をメモることを目的に始めたブログです。

書籍「損害保険研究 第75巻 第4号」(P.74~77)


書籍「損害保険研究 第75巻 第4号」

約定価額の拘束力 -損害保険契約における利得禁止原則に関連して-

中出 哲

早稲田大学商学学術院教授

 

保険法18条2項は、但書の部分を含めて、改正前商法639条とほぼ同じ内容であり、立法者も規律の変質はしていないとする。そこで、改正前商法における裁判例をみてみると、裁判で約定保険価額が保険価額を著しく超えるとみるレベルの基準が直接の争点となったことはなく、著しく超えるとの認定が下された事案も限られていて、裁判例から一般的基準を抽出することは難しい状況にある。
 -略-
平成になってから裁判例(平成10年12月16日大阪高裁判決)があり、それを詳しく見ておく。中古のBMW社製自動車が協定保険価額800万円(内付属品部分100万円)として車両保険(自家用自動車総合保険の価額協定条項付)に付けられたが、それが盗難されたとして損害保険会社に車両保険金の請求がなされた。価額協定条項では、同種の自動車保険の市場販売価格相当額を被保険自動車の価額として協定し、その価額を保険金額として定め、市場販売価額を自動車保険車両標準価格表により定めることとなっていた。標準価格表によれば、同等の車両の価格は585万円から750万円であった。しかしながら、当該車両は、通信販売の安売り業者から365万円(車両価格328万円+税金・自賠責・その他の費用)で購入したものであることが、事故後に判明した。
 -略-
本判決を検討すると、この批判のとおり、実際の取得額をもとに損害てん補を行うと財産価値のある財物を現実に享受しているにもかかわらず、たまたま市場価格より低く調達した場合にその価値がてん補されないという問題が生じる。それは適当でないことは明らかである。しかしながら、本判決は現実に支出した代金でもって保険価額とした根拠として、事故後に同様の激安店で購入したら購入時の価格を上回ることはないと説明していることから、保険価額を標準価格表によるとする約款上の合意も否定し、市場で調達可能な価額を保険価額として採用したものと理解できる。いずれにせよ、何をもって保険価額とするかは議論があろうが、仮に、認定できる保険価額が353万円とすれば、本件では約定保険価額の2.1倍を著しく過大と認定したことになる。この乖離が小さすぎるとの批判は特になされていない。

 

超過保険自体は損害保険に関わっている人間として当然に理解しています。
しかし、判例自体が少なく、またそこから一般的基準を抽出するのが困難とは知りませんでした。意外です。

ここで紹介された事案では、保険価額の2.1倍なら過大とされたとのことです。高額な車両であったために利得の絶対額が大きくなったことも判断の一因になったのではないかと思いますが、それでも一例として参考となります。